無料で日本の原始・古代を学べる渋谷國學院大學博物館

東京都

2021年4月、渋谷にある國學院大學博物館に行きました。先史・古代の出土品の展示が充実していて、無料で考古学・歴史を学ぶことができる施設ということで、コロナが収まった頃を見計らって訪れてみました。中に入ってみると、他の博物館ではなかなか見られないものがあったり、土器の展示が膨大であったりと、見所の博物館でした。写真は撮れませんでしたが、神道についての展示も充実しているので、文化や宗教、民族について知りたい人にもおすすめの博物館でした。

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國學院大學博物館までの道のり

JR渋谷駅を出て東に向かいます。渋谷駅から國學院大學博物館までは歩いて13分です。土地勘が無くよく分からないので、一旦渋谷スカイという高いビルに隣接する歩道橋に上がります。

後で知りましたが、渋谷スカイには展望施設があり46階から都内を見渡せます。料金は前売りでも1,800円と高価ですが。

歩道橋に出ると博物館への道は分かりやすくなります。首都高に沿って東に進めばいいだけなので、楽です。右には渋谷警察署があります。

歩道を真っ直ぐ進み坂を下って上ると、右に実践女子大の門があるので、その次の角を右に曲がります。

右に実践女子大、左に青学の小学校に挟まれた道を進みます。この辺は学校が多いようです。

真っ直ぐ進むと、左に高い建物が見えてきます。國學院大學の塔です。

國學院大學博物館

渋谷駅から歩いて13分。國學院大學博物館に着きました。

コロナの影響で、開館時間が12時からとなっています。

入り口前には大きな陶器の甕と石棺があります。

千葉県佐倉市大篠塚で発掘された箱式石棺

古墳時代末期(6~7世紀)の板石を組み合わせたお墓です。

博物館の中に入ります。

入館料は無料です。来館シートに氏名や電話番号を書いて、検温を受けてから入場します。

企画展

受付を済ませて中に入ると、まず企画展の入口があります。今回は群馬県にある居家以(いやい)岩陰遺跡の発掘に関する展示でした。

縄文時代早期の遺跡のようです。いろいろな模様が付けられた土器の破片が並びます。

石鏃

鏃(やじり)が小さくて薄いので、これで動物を仕留められるのだろうかと思いましたが、後にある展示で鹿の骨に刺さって致命傷になったことが説明されていて、矢として機能していたようです。

骨や石の道具

動物の骨を衣服を編む時の針にしているのは、興味深い展示でした。石は植物の実を叩いたり砕いたりすり潰したり、動物を解体するときのナイフにしたりと、そういった使われ方をしたようです。

人骨

ここまで綺麗に骨が残っているのには、驚きます。アルカリ性の土や粘土、密閉された甕棺や石室に埋葬されると、骨が残るようです。逆に、酸性の土や水・雨に触れると骨は残ることがないようです。

居家以岩陰遺跡は人為的な灰層があり、生活で使った灰を集めて捨てた地層から人や動物の骨が出てきたらしいのです。この灰の地層が人骨を保存するにはよい環境だったのでしょう。

歯もしっかり残っています。

この骨は若年成人女性のものということですが、何歳くらいなのでしょうか。綺麗な歯並びです。儀礼として歯を削ったり抜歯をした形跡がありません。

抜歯は縄文時代中期から後期に行われたようですが、展示が縄文早期ということで、抜歯や研歯の形跡がないのでしょうか。それともそうした風習が必ずしもあった訳ではないのでしょうか。

他に展示されている人骨も見て、意外と虫歯はなく綺麗な歯が多いと思いましたが、パネルによると動物の皮をなめす時に女性は歯を使うため、歯がボロボロになってしったそうです。エナメル質が擦り切れてしまい歯がしみたり、顎関節症になっていたことが判明しています。それでも、痛みを伴いながらも、冬を越すためには動物の皮を歯でなめして加工する必要があり、生きていくのがいかに大変だったかが分かります。

縄文時代早期の装飾具

群馬の山間の集落に住んでいた縄文人が貝の装飾具を身につけています。貝によっては三浦半島で採れる物もあり、この展示から早くから交易が行われていたことが分かるのだそうです。

こういったことは、國學院大學博物館のホームページにある、オンラインミュージアムで解説されていました。常設展もオンラインミュージアムがあり、分かりやすくておすすです。博物館に行く前や行った後に見ると、また理解が深まっていいと思います。國學院大學博物館のホームページはこちらです。

展示スペースは広くはないですが、見応えのある展示でした。驚いたのは、人が結構いました。春休みということで子どもが多かったのですが、大学生でしょうか、若い人もそれなりにいました。

校史ゾーン

企画展の次は常設展の校史展示室へ

常設展は、校史展示室・考古展示室・神道展示室の三つの展示スペースがあります。

校史展示室は創立の過程を説明したパネルが多く、展示品はあまりありません。

陶磁器やキセルなどの生活に使われた芸術品が少し展示されています。

考古ゾーン

ここから本格的な展示になります。入口には火焔型土器が展示されています。

独特の模様がなんともいえません。普段使いというよりは祭祀に使われたものではないかと、いわれています。

弥生時代の銅矛と銅鐸

土師器(はじき)と須恵器(すえき)

火葬した遺骨を納める壷

中を進むと、黒曜石や貝の堆積した地層、土器などの展示があります。

金属器を持たない古代人にとって貴重な資源だった黒曜石

縄文時代の土器

土器の多さに圧巻です。

縄文早期・前期の土器(紀元前8000~3000年)

早期の底の尖った底尖土器は前期になると、形・大きさにバリエーションが増えます。通常時代が新しくなるにつれて土器が小型化していくといわれていますが、前期の時点で既に想像していたよりも小さな土器が作られていたことに驚きます。

厚みもなく、これが更に時代を追うごとに薄くなっていく訳で、当時の技術力の高さが分かります。

右下にある高さのない土器のように、こうした形のものが前期に既に作られていたことも意外でした。

縄文中期の土器(紀元前3000~2000年)

「応用の時代」と書かれているように、取手や模様に変化が見られます。

中期の特徴といえばやはり火焔文様なのでしょうが、上の写真の中段右端にあるようなどっしりとした土器も現れてきます。そして下の写真にあるように、胴の部分にくびれのあるものも作られるようになっています。

縄文後期の土器(紀元前2000~1000年)

驚くのはバリエーションの多さでしょう。小型の土器の多さもさることながら、急須の形をした注ぎ口のあるものも作られるようになってきます。酒器もしくは祭器でしょうか。

縄文晩期の土器(紀元前1000~500年)

そして晩期は更に形が洗練されていきます。

ちょっとだけ土器からそれて装飾品へ。土器や石の装飾品。

魔除けや無病息災のためのピアス・イヤリングのようです。

土器に戻って、弥生時代の土器(紀元前500~)。上段は免田式土器という、熊本を中心に南九州に分布している、独特の形をした土器です。何に使われたのかは分かっていないようです。

古墳時代の土器

土師器。田んぼの土で作られた土器とされています。弥生土器の流れを汲む野焼きにより作られた土器で、煮炊きや食器などに使われたようです。

須恵器(古墳時代)

山の土で作られたとされています。5世紀の古墳時代中期以降に新たに朝鮮半島から伝わってきた、窯を使って1,000度以上の高温で焼く土器です。貯蔵や供膳などに使われたようです。

土師器と須恵器を比べると、色の違いから須恵器の方が高級な気がしますが、どちらが優れているかというのはなくて、用途が違うだけだと説明されることが多いです。

仏教が入って来てから変化したお墓の展示。板碑の展示は珍しいのではないでしょうか。

懸仏と経塚の展示

古墳時代の装飾品

銅鏡

古墳に埋葬されていることの多い銅鏡。時代によってさまざまなタイプがあります。

埴輪

古墳時代といえば埴輪です。殉死の身代わりに作られるようになったとか、埋葬者の財力を表すために作られてといわれています。

下の写真の上は家、左下は「さしば」という道具を見立てたもの、右下は弓矢を入れる道具のユギ形埴輪らしいです。さしばとは、長い柄の先に団扇の付いた物で、高貴な人が来たら畏れ多いその顔を見ないように従者が顔にかざした道具のようです。中国から伝わったものとされています。

円筒埴輪、坪型埴輪

人型埴輪。考古展示室の出口に展示されています。

神道展示室の近くあった、勾玉の展示。子持勾玉というものです。祭祀に使われたのではないかといわれています。

神道ゾーン

考古展示室の次は神道展示室になりますが、神道展示室は写真撮影が禁止なので、写真はありません。神様へのお供え物の神饌や祭儀に使われる道具などが展示されていました。熊野牛王宝印という、烏で文字を表したものも見ることができます。

オンラインミュージアムでは3つのパートの動画を観ることができ、祭祀の遺物、仏教との習合、祭りや捧げものについて、解説を交えて学ぶことができます。興味のある人はYouTubeで観れるので、おすすめです。

感想

一通り見た感想ですが、大きすぎず小さすぎず、丁度よい広さの博物館でした。見応えは充分あるので、古代の歴史や神道に興味のある方にはおすすめです。じっくり見ても1時間半もかからないので、近くに来た時には寄るのもおすすめです。

近くには白根記念渋谷区郷土博物館や山種美術館、氷川神社や金王神社があるので、数ヵ所散策するのも良さそうです。

基本情報

入館料:無料
アクセス:渋谷駅から徒歩約13分
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
開館日:通年(土・日・祝含む)
休館日:不定期(館内保守及び大学の定める休日)
※2021年12月現在、短縮開館となっています。ウェブサイトの開館カレンダーでご確認ください。

氷川神社

帰りは、博物館の右手にある坂を降りて渋谷駅に向かいます。

國學院大學の学生さんと思われる若い人が多いので、渋谷駅から来るならこの道の方が良さそうです。

坂を下っていると、左手に神社の入口があったので寄ってみます。

氷川神社でした。

渋谷氷川神社
渋谷で最古の神社といわれており、江戸時代の記録によると、景行天皇の御代の皇子日本武尊東征の時に素盞鳴尊(すさのおのみこと)を勧請したとされています。

桜の花

車の通る音や隣接している公園の子供の声が聞こえ静かな場所ではありませんが、空気のよい境内です。

緑も多くあり、気持ちが落ち着くいい境内です。

参拝する人が結構いて、常に境内に誰かしらいるのが印象的でした。都会の神社ではこういう光景をよく見るのですが、都内に住んでいたり通勤している人は近くを通ったついでに神社に参拝することが多いのです。無宗教とは程遠い光景です。

石段を下りると、隣に公園があります。

脇から神社に入りましたが、こちらが正門のようです。

氷川神社を出て真っ直ぐ進み、突き当りを右に進むとJR渋谷駅に着きます。

以上、國學院大學博物館と渋谷氷川神社の散策でした。

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