御嶽神社の参道
13時半頃、ケーブルカーで御嶽山に上ってきました。
これから25分ほど歩いて、御嶽神社に向かいます。
一部葉が色づき始め、秋の到来を告げています。
本格的に紅葉となるのは11月になってからでしょう。
整備された杉並木を歩き
垣根や石垣のある道を歩くと
山上に佇む集落が見えてきます。
御師集落①
丸山荘
立派な門が立つ宿坊です。神社へ向かう道には旅館や民宿などの宿泊施設があります。
嶺雲荘
御嶽神社の山頂には26軒の宿泊施設がありますが(2018年現在)、元々は御嶽神社に参拝しに来た人たちに食事や寝床を提供する宿坊でした。
中世から近世にかけて、御師(おし)という神社やお寺に属する人が御岳信仰を各地に伝え、御嶽神社に参拝するように活動しました。
御岳山に参詣すると作物がよく育つ、商売が上手くいくといった現世利益を説き、各地で信者(檀那・だんな)を獲得し、定期的に御岳山に参拝させ、その道案内と寝食などの参拝中の世話をしたのです。
信徒(檀那)の方は講(こう)という相互扶助の組織を村の中で組み、皆でお金を積み立ててそのお金で順番に御岳山に参詣しました。村の代表として参詣するので「代参」といいます。
近世、とくに江戸時代には関東各地から多くの参詣者が御嶽神社を訪れましたが、大正末期からその数は減っていきます。
大正末期から昭和初期にかけて、御師の人達が民宿を始めるようになり、現在に至っているのだそうです。
山の上にかつての宿坊が軒を連ね、現在も数軒の宿が経営しているのは珍しいようです。関東ではここ御岳と大山くらいしか残っていないようです。
御嶽山の参詣についてはまた後ほど、御嶽神社に参拝してから少し書きます。目次の「御師集落②」「御嶽神社の祭事(次の記事)」内で書いています。
もう少し詳しく知りたい方は、別館サイトの「旅の拾いもの」で書いているので、そちらもご覧ください。【東京】御岳山① 武州御嶽山信仰、【東京】御岳山② 御師の活動、【東京】御岳山③ 御岳講(檀那)についての3つの記事があります。
参道を歩いて行きます。
坂を上っていく途中に憩山荘という旅館への道があります。後ほどこちらに泊まります。
御岳山荘
こちらも立派な門です。
古狸山という茶屋
この日はやっていませんでしたが、お茶やコーヒーを提供する休憩所のようです。
大正時代から残る建物らしく、かつての雰囲気が所々残っています。
更に坂を上ると
推定樹齢1000年の神代ケヤキがあります。
坂道は結構急です。
坂道を更に進むと、食事処の並ぶ通りに出ます。右の大展望・駒鳥売店では見晴らしのよい席で食事を楽しむことができます。
左の宝亭本店は、「ちい散歩」で味噌田楽が紹介されたお店のようです。
坂を上ると御嶽神社に着きますが、この辺りにも生活感のある民家が数軒あります。
御嶽神社
14時に御嶽神社に着きました。
手水舎で手と口を清めて参拝しましょう。
御嶽神社にはペット用の水場があります。犬を連れて参拝することが許可されていて、先にあるロックガーデンや展望台まで犬と一緒に歩くことができます。
ケーブルカーやリフトも犬用の運賃がかかりますが、犬を連れて乗車することができます。
鳥居
隋神門
石段
幣殿・拝殿に到着です。左は社務殿です。
右には宝物館があります。中学生が境内の掃除をしていました。地方の神社やお寺に平日行くと、よくこうした光景を目にします。
北畠重忠像
宝物館には北畠重忠が奉納した鎧があり、見ることができます。この時は興味が無くて中に入りませんでしたが、日本三大大鎧の一つといわれる(Wikipediaによると)国宝です。北畠重忠は治承・寿永の乱(源平の争乱)の時に源頼朝に従って各地を転戦し、後に有力御家人となる武士として知られています。
幣殿・拝殿
武蔵御嶽神社について書いておきます。御嶽神社は標高929m、関東一の霊山として天平年間に創建された神社で、現在は「家内安全」「交通安全」「合格祈願」を願う参拝客で一年中賑わっています(御岳登山鉄道の発行しているパンフレット『みたけ山周辺遊歩絵図』より)。
拝殿の彫刻が日光東照宮を思わせる造りになっていることが想像できるように、江戸幕府と関係のあった神社です。慶長11年(1606年)に江戸幕府の命により、この地に蔵王権現(山岳信仰のあった場所に造られる寺社)が造られました。
本殿のある敷地には、いくつかの社があります。
山頂というだけあって、自然が豊かです。
本殿の裏にはいくつかの社がありますが、それぞれ狛犬がいます。下調べ不足もあり旅の時にはそれほど注意しなかったのですが、御嶽神社の狛犬には狼の姿をしたものが幾つかあります。狼と縁のある土地のようです。
写真の左の一段高い所に祀られている社は、大口真神社(おおくちまがみやしろ)です。この時は知らなかったのですが、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征の際に狼が助けたことから、狼が祀られています。
階段を上った所に二体の狛犬があり、それらは狼の姿をしているようです。
この地では古来より狼は「おいぬさま」として祀られてきたようで、「おいぬ」は「老いぬ」にも通じることから、縁起がよいとして狼の絵のお守りが売られてたりもしているようです。
権現の眷属神である狼は邪鬼・火盗の難を除くとされ、近世には民間の御犬信仰と融合して広く信仰されたようです。
また、狼は作物を荒らすイノシシやシカを退治するとされ、江戸時代から狼への信仰が広まったとも言われています。
狼は人を襲うことがあるので何だかしっくりこないのですが、調べてみるとそういった信仰があったようです。
そんな歴史と関係して、現在では犬の祈祷を神社では受け付けていて、愛犬の健康祈願をお願いする方も御嶽神社に訪れています。
ワンちゃん用のお守りを購入できるそうですが、ケーブル駅の売店にはワンちゃん用の「ワンちゃん専用クッキー」なるものが売られているそうです。
ちなみに境内にある一つの社の狛犬には、豚の姿をしたものも。
猪というようりは豚のような気がします。
犬を連れて参拝することができるというのもあり、御嶽山には愛犬家も多く訪れます。御嶽神社からロックガーデンや展望台のある日出山に愛犬を連れて歩く人も結構いるそうです。
御嶽神社に参拝した後は、来た道を戻ります。
これも当時は知らなかったのですが、この石段には鬼が隠れているそうです。
約330段ある階段の途中に、3匹の鬼の彫刻が段差にあるようで、それを踏むと福が訪れるのだとか。
石段の各所にある椅子には犬の彫刻も。
河童も
フクロウも
陽も暮れていく中、これから怪我をした登山者を助けにいく救急隊員とすれ違いました。無線から登山者が骨折して動けない、と聞こえてきました。仕事とはいえ、重そうな荷物を背負った救急隊員の姿を見ると、頭が下がる思いです。
隋神門(山門)から見える景色。
チベット系の僧とすれ違いました。
西アジア系の顔付をしていたような気がします。
僧(お寺)と神社。交流があるのでしょうか。興味があります。
鳥居まで降りてきました。登山者の姿もよく見かけます。
隋神門と拝殿の間にある道からロックガーデンや他の山へ繋がっているようで、リュックを背負った人が結構歩いていました。
左にあるのは天空風呂の宿 蔵屋
お茶処も兼ねているらしく、ホームページを見ると手作りおやきが名物なのだそうです。
今日採れたての新鮮なゆずが一袋100円で売られていました。…買っておけばよかったです。
向かいには、昔懐かしの看板がある寿屋
平日だからでしょうか、あいにく閉まっている食事処が多いのですが、この辺りでは刺身こんにゃくを食べることができるようです。
刺身こんにゃくは御岳の名物にもなっていますが、各宿やお店が手作りで作っていて、それぞれ味が違うらしいです。
所々、参道の合間に都内の街並みを見渡せる場所があります。
先ほどの古狸屋まで戻り、御嶽神社へ向かう道とは別の道を歩いてみます。
竹の生い茂る道へ
少し寂しい道ですが、大きなリュックを背負った登山者とすれ違ったりと、それなりに人通りのある道でした。
こういう道を歩くだけでも都心とは違った感覚があるので、いい気晴らしになります。
御師集落②
道を抜けると、こちらの方にも御師集落があります。
石垣に挟まれた雰囲気のある道
と々炉
御岳山の看板では売店もしくは食事処のような感じでしたが、現在は営業していないようです。
駒鳥荘。御嶽神社の神職である御師が営業している宿で、宿泊プランに滝行があることで有名な宿です。大きな桶の風呂も人気のようです。
南山荘
口コミがいいと評判の宿です。フローリングでベッドのある部屋もあるようです。季節によっては雲海も見られるそうです。
26軒の宿坊・民宿のうち実際に神主や御師が経営している民宿が、御岳山にはあります。山楽荘、山香荘は神主さんが経営している宿のようで、駒鳥荘は御師が経営する宿のようです。
ここ御岳山は、霊場として古くから多くの人が訪れ、参詣者と深い関わりの歴史のある場所ですが、そうなったのは御師の勢力的な布教活動があったからです。
御師は武蔵・相模を中心に信徒を増やして檀那をつくり、それが定着すると年に三回の檀家廻りを行いお札を配り、年に一度の御嶽神社への参詣を勧めました。
御岳御師の布教によって檀那となった地域は広く、その範囲は埼玉・東京・神奈川・山梨・茨城・千葉・栃木・静岡と広範囲に渡りました。中には現在の福岡県や北海道の旭川から御岳に参詣する講もあったそうです。
また、栃木・群馬・茨城からの参詣者の中には、講を組まないで個人で参詣した例もあり、その熱烈な信仰がうかがえます。
そんな歴史のある場所なのです。歩いていると不思議な感覚になります。
さて、来た道を戻り今夜のお宿に向かいます。
憩山荘
今回は憩山荘という民宿に泊まります。せっかくなので御師の経営する宿に泊まろうかと思いましたが、ハードルが高く感じたので当たり障りない民宿に泊まることにしました。
代々御師が経営する宿坊では、駒鳥荘が一人でも宿泊できたかと思います。今回は御師や御岳山の歴史を知りたいというよりは、都会の喧騒から離れて一人静かに考え事などをしたいと思ったので、民宿に泊まることにしました。
憩山荘
一人でも泊まれる宿です。チェックインの前に周辺を少し歩きます。
見晴らしのいい場所があり、山々を眺めることができます。
この辺りは早朝や秋など、季節によっては霧がかかることがあり、雲海を見ることもできるそうです。
霧がかかると神秘的な雰囲気、幻想的な雰囲気になるので、「都内の秘境」「天界集落」「天空の里」などと呼ばれることもあります。
ここ御岳山の山上には数十軒の民家があり、140人ほどが生活をしているとされています。
奥に進むと民家になるので、引き返して宿に入ります。
中の様子
自販機
2階の部屋に案内されます。
床の間のある和室です。
入口には鍵がついていて、Wi-Fiも繋がります。
窓からは外が良く見えます。手前に木が立ちますが、それほど気になりません。
青空と緑の木々の景色が綺麗なので、電気を消してしばらく外の景色を楽しみます。
奥には都内の街が見え
夜は夜景が楽しめます。
人の声も車の通る音もない静かな場所です。
今回は旅というよりは一人合宿をしに来たのですが、作業をするにはいい環境でした。
たまに外の景色を見てぼんやりしては、また作業をして
日が暮れ始めたらまた外の眺めを見て、また作業に戻ってと繰返しますが、おかげでかなり捗りました。
リラックスできるのでいいアイデアも浮かび、有意義に時間を使うことができます。
月が出てきました。
せっかくなので、外を少し散歩してみます。
宿の入口には今晩の宿泊者の名前が書かれています。自分の他に外国人の若者が泊まっていました。
時刻は17時を過ぎたあたりです。
月が上がってきましたが、まだ明るいです。
都内の街並み
段々と暗くなっていきます。
こうして月をずっと見ることも普段はないことです。
ぼぅ~と眺めてただただ日の暮れるの待ちます。
日が暮れてきました。
残念ながら太陽は隠れて見れませんが、光の変化を楽しむことはできます。
本格的に暗くなってきました。
季節は10月後半ですが、17時を過ぎると寒くなります。
手は凍えるくらい寒く、手袋が欲しいくらいです。
ライトダウンを着ているので体は温かいのですが、寒さに慣れていない耳や鼻、手が寒くて堪りません。
都会の街並みの光が目立ってきました。
風でしょうか、ゆらゆらと光が揺れるので、それがまた幻想的で魅入ってしまいます。
辺りはすっかり夜になりました。
宿に戻ります。
部屋に戻って電気を消してみると、綺麗な夜景がよく見えます。
予約する時に特に何もしなかったのですが、この部屋に泊まれてラッキーです。
月もきれいです。
さて、風呂に入り夕食をいただきます。
時間ごとの貸し切りなのでゆっくり浸かれます。
夕食
夕食は大広間でいただきますが、仕切りがあるので一人でも気になりません。
仕切りのことは口コミで書かれていたので事前に知っていましたが、こういうのがあるだけでも落ち着けます。
夕食は山菜の煮物など山のものが多いです。
鮎の塩焼き
茶碗蒸し
結構なボリュームで十分な量でした。
部屋に戻ります。
部屋の灯りを消して、自販機で買った缶ビールを飲みながらこの綺麗な夜景を楽しみます。
ゆらゆらと揺れる都会の明りを見ながら、今晩は寝ることにします。
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