古代・刑罰・伝統工芸品について学べる明治大学博物館

東京都

2021年4月、東京千代田区にある明治大学博物館に行きました。明治大学博物館といえば、ギロチンやアイアンメイデン(鉄の処女)という拷問器具が展示されていて「国内唯一の拷問博物館」として知られていますが、個人的には刑罰の展示よりも古代の展示と伝統工芸品の展示が面白いと思いました。無料で充実した展示を観ることができるので、近くに寄った際には是非とも立ち寄りたい場所です。

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アクセス

JR御茶ノ水駅から明治大学博物館に向かいます。御茶ノ水橋口改札を出ると明治大学の案内があるので、それに沿って左に進みます。改札から歩いて5分の距離です。

訪れたのは4月の第4週目。人通りはそれほど多くはありません。大阪府のコロナ感染者拡大のニュースが度々流れ、東京でも外出自粛ムードとなっています。4月25日の日曜からGW明けの11日まで緊急事態宣言が出る可能性が高くなり、また散策を自粛しないといけなくなりそうです。

さて、下倉楽器や黒澤楽器、イシバシ楽器など、昔からある楽器店が並ぶ通りを歩くと、5分ほどで明治大学に着きます。

階段を上ると左の建物に博物館の案内があり

階段を上った所の左の建物から入れます。

明治大学博物館

ここから地下に降りて行きます。

博物館の構成は商品部門・刑事部門・考古部門・大学史となっています。

エスカレーターを降りて建物に入り、入館記録カードに記入します。

左の入口が企画展示室です。今回は新しく収蔵した物を紹介していました。

右手が常設展の入口。

入口前には明治大学の敷地から出てきた江戸時代の遺物が展示されています。

明治大学は江戸時代の藩士の屋敷があった所に建てたらしく、当時の武士の生活用品が幾つか収められています。下の左の丸いのは土で作った面子、右のはおままごと用の道具。

焼塩壺

塩を焼成するための使い捨ての土器と思われます。土をこねて器を作り、その中に塩を入れて器と一緒に焼くことで、まろやかでさらさらの上質な塩が作れるらしく、お祝い席で使われたらしいです。

和鋏

朱印船貿易の時に海外に輸出されることもあった、洋鋏とは違った形の鋏です(別館で記事にしているので興味のある方は読んでみてください、こちらです)。

企画展示室

常設展の前に企画展を見てみます。

中はこんな感じであまり広くないですが、椅子があります。個人的に博物館のこういう椅子が大好きです。一休みできるのはもちろん、スマホで調べ事をしたりメモをしたりできるので、有難いです。

ちなみに、ここは分かりませんが、常設展(更に地下に降りますが)はWi-Fiが使えます。パスワードも通路に貼られています。

山形の伝統工芸品、将棋駒の説明

器の材料の説明

左上の木合(もくごう)は知りませんでした。おが屑を合成樹脂で固めたものです。プラスチックよりも保温性が高いようです。

柿右衛門の陶磁器

鎖国期にオランダ船に積まれヨーロッパに輸出された人気の陶磁器としても知られています。こちらも別館に記事があるので見てみてください、こちらです。

銅剣

クリスという東南アジアの短剣。初めて知りました。

企画展を見た後は、階段を降りて常設展示室に向かいます。階段を降りる前に、校史ゾーンがあり大学の説明が展示されています。

階段を降りると広い空間が目に飛び込んできます。

手前が商品部門の展示。その奥が刑事部門で、更に奥に行くと考古部門の展示室があります。

まずは商品部門の展示を見てます。

商品部門

コの字型の部屋に入ると目の前に広がるのは、伝統工芸品の数々。

陶磁器

漆器

竹細工・染織物・金細工・和紙

この一室で日本の伝統工芸品のことがほぼ分かると言ってもいいでしょう。それぐらい充実した展示です。一見の価値ありです。

記事が長くなってしまうので写真をできるだけ割愛しますが、3つほどここ展示の魅力をお伝えしたいと思います。

1つ目は、まず材料についての説明がいいです。

これは竹細工に使われる竹の展示で、実際は10種類の竹が並んでいます。左から2番目のくねくねしているのは「亀甲竹」、右から2番目の角ばっている竹は「四角竹」。いろいろな材料があることが分かります。

2つ目は、製造工程が目に見えるところです。

これは漆器ができるまでの行程です。ろくろで木をくり抜いてから補強のために布を縁に巻いて、それが木と一体化するように削る工程があります。削るにも金具を使うのと炭のようなものを使うのと数回あり、想像以上に手が込んでいるいることが分かります。

他にも陶磁器・竹細工・織物・鎚起銅器(ついきどうき)・包丁が出来上がるまでの工程が展示されています。

3つ目は、パネルの解説がいいところです。

例えばこの漆器の説明からは、宣教師が貿易に関わっていたことや海外に向けての商品が国内で造られたことが分かります。原料の説明だけでなく、どうのような商品としての価値があったのかを知れるところがいいです。

原料の説明も充実していて、漆は採取する時期で品質が変わり呼び方が複数あることや、固まった後に研いだり削ったりすることができ繊細な加工ができることも解説しています。

出雲産の石は品質が良く松江藩が他の藩に流出しないように保護していたこと(津留といわれる)や和紙は鳥取藩・津和野藩・浜田藩(共に島根県石見周辺の藩)が専売制を敷いていたことも知ることができます。

上野の国立博物館でも伝統工芸の展示や解説を見ることができますが、こちらの博物館も決して劣らない、充実した展示・解説に触れることができます。展示のスペースは広くはありませんがいろいろな情報が凝縮されています。

日本の伝統工芸品に興味のある方は、わざわざ見に行く価値があります。

見応えのある商品部門を見た後は、隣の刑事部門の展示を見ます。

刑事部門

通路には律令や分国法、幕府法など時代順に出された法令が展示・解説されています。昔の字は読めないので、ここは軽く見るのにとどめます。

個人的に興味を持ったのは、字が浮いた高札。周りの木を削って文字を浮かせているのでしょうか。内容は親子・兄弟・夫婦は仲良く円満にしなさいというものらしいのですが、これほど手間をかけてまで作った意図は何だったのか、気になります。

コの字の部屋に入るとまず見えるのが、アイアンメイデン(鉄の処女)

ギロチンと並んでいます。

日本で使われた処刑の道具

過去にあった残酷で非人間的な拷問や刑罰を批判的な視点から回顧し、現在の法と社会を考えるきっかけとするための展示なのだそうです。

捕縛時に使う道具も時代性というのか、インパクトがあります。

ネットで明治大学博物館を調べるとこの刑罰展示室が有名ですが、個人的には他の二つの展示の方が充実しているように感じました(興味関心によるものでしょうが)。入墨の解説がありましたが、刑罰としての鼻削ぎについても知りたいと思うこともあり、個人的にはもっと知りたいことがありました。

さて、最後に奥にある考古展示室を見てみます。

考古部門

石器が充実しています。

特に黒曜石に興味のある人には見応えがあるのかと思います。

鋭敏な石器がどのように削られたのかやどのように広がっていったのかを知ることができます。

貝塚の断面図

右の赤い印が海抜52mの目印です。こうして実際に見ると、当時海面がかなり高かったことが分かります。

土偶

石棒

縄文時代早期の尖底土器

土器は縄文時代・弥生時代・古墳時代と時代ごとに展示されています。

土器自体の解説はそれほどありませんが、時代が進むにつれて進化していく過程は見ることができます。

弥生時代土器

形から水ものを入れていたのでしょう。煮炊き用でしょうか、炭の後から加熱した形跡が見られます。

弥生時代後期の土器

彩色が見られます。朱く塗られていることから、水だけでなく籾(もみ)など大切なものを保管していたとされています。

人骨用の壺形土器

人骨を収める土器です。弥生時代初期の遺跡から見られるもののようです。

「再葬墓」といわれる墓制で、土中に遺体を埋めて骨だけになったら掘り出して、遺骨を壺に入れてまた土の中に埋める葬儀(墓)のようです。史学的には東日本の縄文晩期から弥生中期にかけての墓制ですが、風習としてみれば縄文時代から現在に至るまで行われているもののようです。

古墳時代の土器

より洗練された模様や小型化、そして黒や赤に彩色されたものが出てきます。

底部穿孔壺形土器と円筒埴輪。下のは高坏。

底部穿孔壺形土器とは、底に故意に穿孔(穴を開けること)した土器で古墳に置かれたものなのですが、なぜ穴を開けているのかはまだ詳しいことが分かっていないようです。

気になるのは黒い土器

調べてもあまりよく分かりませんが、マンガンの含まれる土で造ったり、炭で表面を黒くしたり、漆に鉄を混ぜた黒漆で塗ると、黒い土器になるようです。

古墳時代といえば、埴輪。

盾を持った埴輪や力士の埴輪、その隣には槍を持った躍動感のある埴輪が展示されています(レプリカです)。

そして展示が充実しているのが、銅鏡。

これも時代ごとに種類がたくさんありよく分からないのですが、それぞれの違いを知るにはいい展示です。

こういった解説シートがあるのもよくて、銅鏡に興味のある人には勉強になる所だと思います。

埋葬された状態も知ることができます。

銅鏡の鏡面

手入れしないと錆びて光ったりものを映すことができなくなりますが、磨けばまた輝きます。こちらも別館に書いていますので、興味のある人は見てみてください。

感想

素晴らしい博物館でした。刑事展示室が有名な大学博物館ですが、個人的には他の二つの展示の方が見所がありました。「国内唯一の拷問博物館」とインパクトのある紹介がされる場所ですが、古代の展示や伝統工芸品の展示ももっと注目されて然るべきだと、個人的には思います。

無料で展示を見れますし、御茶ノ水駅から徒歩数分とアクセスもいいの、興味のある方は一度訪れてみるのがおすすめです。

こちらの大学もネットミュージアムがあり、どのような展示があるのかサイトで見ることができます。メニューから常設展示へ入ると、商品・刑事・古代のそれぞれの展示について3分~7分ほどの動画があります。明治大学博物館のホームページ→明治大学博物館 | 明治大学 (meiji.ac.jp)

基本情報

入館料:無料
アクセス:JR御茶ノ水駅から徒歩5分
開館時間:月曜~金曜日10時00分~17時00分(入館は16時30分まで)
     土曜日10時00分~12時30分(入館は正午まで)
休館日:日曜日・祝祭日
※2021年12月現在、土曜日は時短開館となっています。休館日・営業時間は事前にウェブでご確認ください。

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