和田浦駅到着 民宿じんざにチェックイン
前回の記事の続きになります。館山駅から15時過ぎの電車に乗り外房に移動して、5つ目の駅の和田浦駅に15時半に着きます。
館山駅を出てからはほどんど海は見えず、田んぼや畑と民家が続く車窓でした。和田浦駅に近づいてようやく海が見えるようになりました。
和田浦駅は無人駅です。2011年以降1日の利用客が100人を切り2017年から無人駅になりました。
電車の本数は1時間に1本と少ないです。
海岸を散歩する前に、今晩の宿にチェックインします。
民宿じんざ。鯨料理のコースを楽しめる珍しい宿です。駅の改札からまっすぐ歩いて1分と、和田浦駅のすぐ近くにあります。
感じのいいご主人に和室を案内されます。建物は新しくはありませんが、掃除がゆき届いていて清潔感があります。Wi-Fiも飛んでいます。
風呂トイレ洗面所は共同ですが、風呂洗面所は2つあるので困ることはありません。
畳ヘリが鯨。これはいいですね。
食事まで時間があるので、外を散策します。線路を挟んだ反対側に海があります。
和田浦の特徴
海岸なので風は少し強いです。近くには和田浦港がありますが(翌日の早朝の散歩で行きます)、和田浦港は全国でもたった4ヵ所しかない捕鯨基地です。毎年6月末~8月末の鯨漁期に26頭のツチ鯨が捕獲され、全国でも珍しい鯨の解体には多くの人々が見学に訪れます。
鯨といえば竜田揚げやベーコンが有名ですが、クジラ肉を塩水に浸け天日干しにした「鯨のタレ」も美味と評判です。この辺りのお食事処で味わうことができるようで、「ぴーまん」や道の駅の食堂「和田浜」が有名です。黒潮の流れる和田浦では名産の伊勢えびをはじめ海の幸が獲れる場所なので、鯨以外の海の幸も楽しむことができます。
和田浦には海水浴場や磯場があり、夏には海開きが行われ沢山の家族連れが訪れます。貝殻混じりの白い砂浜が綺麗で、波が穏やかなため子供でも安心して泳げる海水浴場なのだそうです。夏にはウミガメが産卵に来るそうです(じんざのホームページを参照)。
また和田浦は、南房総花づくり発祥の地としても知られています。黒潮の影響を受け、冬でも比較的温暖で無霜地帯であるため、常春の地南房総では12月から水仙の花が咲き始め、翌年の3月まで花摘みが楽しめます。鋸南町の水仙、南房総市、館山市のポピー、金魚草などが人気らしく各地に『花摘スポット』が点在しています。
大正9年、当時の和田村(現在の南房総市和田町)に住む、薬剤師であり家業の農業を継いだ間宮七郎平が寒菊を売ったのが始まりとされています。開通した鉄道を利用して北条駅(現在の館山駅)から東京に移動して出荷し、高値で取引したのが、南房総の花栽培のスタートとされています。戦時中に休業していた栽培は戦後に復活し、今では花摘みスポットとしても知られています。 南房総市の花摘みのできる花畑は、和田浦のほか、千倉(白間津、平磯)、富浦があります。
和田浦駅から徒歩26分の所に 間宮七郎平 が築いた抱湖園(ほうこえん)という寒桜の名所があるので、散策が好きな人にはおすすめかもしれません。近くには 和田浦の花畑があり、12月~5月まで菜の花が咲く場所があります。
海岸を散歩した後は、道の駅の和田浦WA-O!に行きます。
道の駅の和田浦WA-O!
鯨の展示室が隣接している施設です。入口にはシロナガスクジラの骨が展示されています。
無料で写真撮影も可です。
世界の鯨
色々な種類があることが分かります。イルカもシャチも鯨の仲間というのは知りませんでした。
今では千葉では和田浦港でしか鯨を獲っていませんが、かつては銚子や勝山、館山でも漁が行われていたことが分かります。
また、獲った鯨を供養する鯨塚が千葉沿岸部の各所にあったことも展示から知ることができます。全国の沿岸部に存在する鯨塚・鯨墓・鯨碑・イルカ碑などを合わせると100基以上が日本に存在するそうです。
隣にある直売所&おみやげ処「みなみや」。奥にはお食事処「和田浜」があります。和田浦名産の鯨料理やアジやイサキなどの房州地魚料理を食べられます。
みなみやには鯨関連の食材やお土産が多く、しぐれ煮、ハム、ジャーキー、ふりかけなどが置いてあります。地元で水揚げされた鯨以外にも全国のくじら商品を扱っているようです。
ひじきそばなんてものも。
房総名産の「とろろめ」もそこそこ有名なようで、買ってみました。主に太平洋岸に多く生息するコンブ科の海藻で、「かじめ」とも呼ばれているようです。ミネラルを豊富に含んでいる海藻の中でも、ぬめりが特徴でアルギン酸、フロロタンニン(ポリフェノール)など多くの栄養素が含まれる健康食品として注目されているのだとか。
アルギン酸にはナトリウムを排出する働きがあり高血圧の予防効果があり、ぬめり成分がコレステロール吸収を妨げ、血管のつまりを防ぎ動脈硬化や心筋梗塞の予防になるのだそうです。ぬめりに含まれるヨードは代謝を上げる効果があり、ダイエットや美容効果もある。…らしいです。
とろろ丼がおすすめの食べ方らしく、ご飯にかけて黄身と小ネギをかけて、ごま油と醤油で味付けするといいようです。その上に刺身と乗せても美味しくいただけます。
鯨関連の食べものでは、「たれ」(ジャーキー)としぐれ煮がおすすめとのことでした。和田浦ではツチクジラが獲れるとのことで、ツチクジラのハムも買ってみました。味はどちらも塩が強く、お酒のアテにするのがいいのかなと思いました。
店員さんから鯨の話をいろいろと聞いていたら、イルカを食べる地域があることを知りました。今でも九州ではイルカを食べるようで、鯨よりも獣臭いそうです。後で調べてみたらイルカとクジラは管轄が違うようで、イルカは県が、鯨はIWCが管轄していました。イルカは静岡で食されているとのことでした。
夕食まで時間があるので海岸を散歩します。
陽が沈むのは反対側なので、こちらの海岸では朝日を見ることができます。
夕飯の時間になったので宿に戻ります。
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鯨フルコース
18時になり部屋で食事をいただきます。
お品書き
じんざ名物、鯨フルコースです。鯨だけで17品、それにデザートなど3品、計20品もあります。
上のお皿は鯨のお寿司。左から槌鯨の漬け、ミンク鯨の赤身、イワシ鯨の尾の身。
下のお皿は左から、畝須(なす)ベーコン、百尋の塩ゆで、くじらのたれ。
畝須(なす)ベーコンは市販のものと違い赤身がついています。しょっぱさもなくスーパーや居酒屋で口にするのと全く味わいが違います。真ん中の百尋の塩ゆでは腸詰めです。コリコリと固めの食感で味は塩っ気がするくらいで特にありません。くじらのたれは肉を海水に浸けて天日干ししたジャーキーで、和田浦のご当地です。素朴な味わいで甘さもなく、よく噛んで食べると肉本来の旨みがします。マヨネーズを付けて食べるのがおすすめのようです。
意外にも素朴な味です。癖や獣臭さがなく、むしろ薄味です。市販の鯨がいかに添加物で味付けされているのかよく分かります。
槌鯨のカツロールと尾羽(おば)の辛子酢味噌和え。尾羽(おば)は尻尾を刻んだもので透明です。コリコリとした食感で特に味はしません。
お刺身はミンク鯨の赤身と本皮、さえずり、槌鯨のむね肉、イワシ鯨の尾の身。
ミンク鯨の赤身と本皮(真ん中上)。解凍したものでしょうが、生身は全般的に肉の食感に魚の味(マグロに近い味)がします。歯ごたえがよく、美味しいです。さえずり(右の色の薄い肉)は馬刺しのような食感で鰯のような、青魚系の味と香りがします。
槌鯨のむね肉(左)も馬刺しのような食感とマグロのような味で、イワシ鯨の尾の身(真ん中の下の筋の見えるもの)は槌鯨のむね肉と同じ美味しがありますが、違いがあります。どう違うのかは伝えられませんが、食べ比べてみると確かに違います。
左は槌鯨の南蛮漬けで上のは槌鯨のカツと竜田揚げ
揚げ物はどちらもシンプルで美味しく、食感もよく食べ応えがあります。槌鯨の南蛮漬けも美味しく、南蛮ソースとも合います。鯨の肉はいろいろな料理に使えるのだと実感します。
ハリハリ鍋。槌鯨の竜田揚げとさえずり(鯨の舌)
普通にめんつゆの味がよく、美味しい鍋うどんでした。甘い醤油系の出汁やうどんと鯨の肉は合います。
槌鯨のステーキ。レアでお願いしました。
塩胡椒で軽く味付けして、わさびをつけていただきます。これは本当に美味しかったです。上品なお肉を食べている感覚でした。
鯨をいろいろな食べ方で味わえて、いい体験ができました。スーパーで鯨の刺身を買うと甘じょっぱい味付け既にしてあります。リン酸塩(Na)や調味料、pH調整剤や酸化防止剤(V.C)などが添加していますが、本来の鯨の刺身は違う味であるとよく分かりました(鯨の種類も異なりますが)。
槌鯨の竜田揚げやカツ、南蛮漬けも美味でした。槌鯨は火を通しても固くならない性質があるため、熱を加える料理にはおすすめで、長い間地元で沢山の人に好まれてきたとのことでした。
鯨だけでなく、料理全般美味しかったです。味つけが濃すぎず、ポテトサラダや辛子酢味噌漬けは薄味で美味しく、南蛮漬けやめんつゆは濃くてこれまた美味しく、いい味つけでした。
健康食品として注目されている鯨は、低カロリー高タンパク質の肉として知られ、ダイエットにもおすすめの食材とされています。バレニンという鯨特有のアミノ酸が疲労回復にも効果があり、上質な食材とされています。
普段はスーパーで刺身やベーコン、竜田揚げぐらいしか買うことができませんが、槌鯨・ミンククジラ・イワシクジラの3種類の鯨をいろいろな調理方法で味わうことができました。鯨の本来の味が知れましたし、スーパーで売っているのとは別物だと分かり、いい体験でした。
次回に続く
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