【名所解説】世界遺産薬師寺の見どころを紹介

散策の手引き

世界遺産に登録されている薬師寺は、近くにある唐招提寺とセットで拝観する人も少なくないと思います。

そのため薬師寺にあまり時間をかけずに参観する人が多いと思いますが、境内には見どころの多くあります。

今回は、旅をして知った世界遺産・薬師寺の見どころを紹介したいと思います。

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薬師寺とはどんなお寺?

薬師寺の創建は680年、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を祈願して藤原京に発願されたお寺です。一度藤原京で建てられましたが、藤原京から平城京に遷都する際、それにともない移転してきたお寺です(移転と言っても、建物は一から建てられたようです)。

薬師寺は法相宗の大本山で、法相宗は現存する最古の仏教の宗派です。三蔵法師で知られる玄奘三蔵がインドから帰国した後、その弟子により中国で開かれた宗派です。日本では、道昭が唐に留学した際、玄奘三蔵に師事し、帰国後に法相宗の教えが広められました。

法相宗は南都六宗の中で一番勢いがあり、同じ宗派の寺院に興福寺があります。

薬師寺のすごさ

薬師寺のすごさは「復興」にあると、個人的に思います。薬師寺は南都七大寺の一つに数えられる大寺院でしたが、火災や兵火で東塔を除く全ての建物が焼失し、明治時代には神仏分離と廃仏毀釈で荒廃しました。

境内の荒廃は酷く、金堂の屋根は崩れ、陽の光や雨が本尊の薬師如来像にあたる有様だったといいます。御本尊を祀る金堂がそういった有様でしたから、他のお堂はもっと荒廃していたことが想像されます。

その後、戦後に管主だった高田好胤和上が大復興事業に取り掛かり、全国を行脚して般若心経の写経勧進をし、復興資金を集めました。修学旅行で多くの学生が来るようになると、薬師寺のお坊さんによる分かりやすい話は有名になり、徐々に参拝者が増え、多くの苦労を重ね、現在では金堂・講堂・西塔をはじめとした堂宇が再建されています。

こうした、荒(すさ)んだ状態から復興したところに薬師寺のすごさがあります。

薬師寺の見どころ

それでは、それでれの建物の見どころをみていきましょう。

南門

まず、薬師寺を参拝する際は、南門から入るのがおすすめです。駅から近いのは與樂門(よらくもん)ですが(駅から2、3分です)、遠回りして(駅から5、6分です)南門から入りましょう。

昔お寺は南門から入って、南から北に進んで行くように造られている所が多く、薬師寺もそのような造りの寺院なので、南門から入るのがおすすめです。

一旦遠回りをして南門から入り、駅に近い與樂門から出て、唐招提寺に向かうのがおすすめのルートです。

中門

そして、南門から入ると、このように西塔(左)と東塔(右)が並んでいるのを目にすることができます。

回廊を囲む境内に塔を東西に建てているのは薬師寺が初めてと言われ、そのような建築様式を「薬師寺式伽藍配置」といいます。

塔が二つあるのは、「釈迦八相」を表しているからです。

釈迦八相とは、お釈迦様が苦行を行ったり、悟りを開いたり、入滅したりといったお釈迦様の生涯の重要な場面を表した八つの場面をいいます。

塔の内部の四方向にその場面を彫り、二つの塔で八つの場面を表しています。

回廊を囲む中門には、二天王像が立っています。

おそらく創建当初の、奈良時代の色彩を使っていると思われ、

「当時はこうした色を使っていたんだな」

と考えるのも、面白いのではないかと思います。

と言うのも、薬師寺は色を楽しむのがおすすめだからです。

金堂

回廊の中に入ると、御本尊を祀る金堂があります。

金色の鴟尾(しび)、グレーの瓦、白い壁、朱色の柱、緑色の格子が、奈良の色合いを出しています。

奈良を表す「青丹よし」の枕言葉は、緑色の顔料の土で作られた瓦を指すと言われ、魔除けのために塗られた朱色を映えさせるいい色合いを出しています。

ついでに、「青丹よし」は諸説あり、緑色の格子を青とし、それと朱色を指しているいるとも、緑色の奈良の自然景観と朱色の奈良時代の建物を指しているとも言われています。

金堂の中に安置されている御本尊の薬師如来像は、創建当初から祀られています。中央に薬師如来、向かって右に日光菩薩、左に月光がっこう菩薩が安置されています。

薬師如来は正式には薬師瑠璃光如来といい、東方に位置する浄瑠璃浄土の仏様で、人びとの病気や災難を除き、健康と幸福を与える仏様として信仰を集めています。薬師如来の左右に立つ日光菩薩、月光菩薩は、太陽や月の光が差別なく照らすように人びとを見守る仏様です(薬師寺のHPより)。

表面を覆う金が剥がれていますが、銅が黒光りする様が美しく、多くの参拝者に人気の仏像です。

講堂

金堂の奥にある講堂も瓦と壁と柱の色合いが美しく、特に晴れた日はいい光景です。

平成15年(2003)に再建された建物で、現在は弥勒三尊像を安置しています。

薬師寺の建物は多くが戦後に再建されたもので、新しく侘び・寂びのない光景ですが、新しいおかげで奈良時代当初の色合いを楽しむことができます。

講堂は金堂よりも大きく造られていますが、これは教学が盛んだった奈良仏教の寺院建築の特徴を表しています。

西塔

昭和56年(1981)に再建された建物で、西塔も奈良を表す「青丹良し」の色合いを観ることができます。

創建当初はこういった鮮やかな色だった訳ですが、寺院を再建する際に創建当初の姿にするのは、

仏様の住む世界は本来、金色に輝いているのだからそれを表現すべきという、韓国や東南アジアでの考え方なのだそうです。

向こうでは再建や改修の度に色を塗り直し、それこそが仏教本来の教えだとしています。

創建当初からある古い東塔と、この新しい西塔を見比べて、そういったことを感じることができるのも、このお寺の見どころの一つなのではないかと思います。

東塔

東塔は養老5年(721年)の奈良時代前期に建てられ、薬師寺で唯一、創建当初から残っている建物です。

六重塔に見えますが、構造は三重塔です。1階と3階と5階に裳階(もこし)と呼ばれる飾り屋根があり、屋根の大小のバランスが何とも美しい塔です。

法隆寺の五重塔が力強さを特徴とするのに対し、薬師寺の三重塔は力強さに優美さを兼ね備えているのが特徴といわれ、法隆寺の五重塔よりも薬師寺の東塔の方が人気があるといわるほどです。

この美しい東塔は、平安時代に藤原道長によって造られ、当時の多くの貴族を感嘆させた法成寺(ほうじょうじ・現在は焼失して残っていない)の三重塔のモデルとなったとも伝えられています。それだけ創建当初からその美しさが称えられてきた建物なのです。

また、白鳳様式(大化改新から平城京が遷都するまでの時期)の東塔は、平城宮の朱雀門や太極殿(大極殿)などの宮殿建築の復元の際に参考にされたといいます。

日本では時とともに枯れていく姿をよしとし、修復の際も古い姿をなるべく残すように枯淡(こたん)な色にしている寺が多く正に東塔がそうなのですが、他の新しい建物は創建時の姿を復元して明るい色彩になっています。

西僧坊

西僧坊(にしそうぼう)では東塔で使われていた水煙が展示されています。

創建当初から使われていた実物を間近で観ることができます。

実際に目にするとその大きさに驚きます。法隆寺の五重塔の相輪の重さが3トンなので、薬師寺のもそれに近い重さがあると思うのですが、最上部の屋根が風で飛ばされないようにしっかり押さえ、塔を守るためにはそれほどの重さが必要だということが分かります。

休憩所

休憩所には巨大な台湾産の檜が展示されていますが、なんと樹齢2500年の大檜です。

2500年前といえば紀元前500年で釈迦や孔子が活躍していた時代でしょうか。日本は縄文時代の晩期か弥生時代の初期にあたると思われます。

法隆寺の記事で書きましたが、樹齢千年の檜は建築材として千年持つと言われているので、この樹齢2500年の檜は、もう2千年は持ちそうです。

講堂の再建のために特別に、平成5年に寄進されたものですが、現在は(平成3年より)台湾では自然保護のため木材の輸出が禁止されています。ですので、非常に貴重な檜なのです。

輸出が禁止される前は、台湾から檜を買うことがあり、日本の寺院の再建や改修に台湾産の檜が使われることがありました。

ついでに、日本の檜は平城宮跡の再建で使い切ってしまっているので、現在の寺院の木材はカナダやアフリカなどの海外からの輸入に頼っています。

休憩所には薬師如来の台座の展示もあります。

薬師寺の御本尊の薬師如来像の台座には、四方向にそれぞれの方角を護る四神が彫られています。

その上にはインドの力神(蕃人・ばんじん)が彫られており、見切れてしまっていますがその上にはギリシャの葡萄唐草(ぶどうからくさ)文様とペルシャの蓮華文様が彫られています。

シルクロードを渡って西洋とアジアのいろいろな国の文化や思想が薬師寺に伝えられたことが、この台座に彫られている模様から分かることができます。

その他の見どころ

薬師寺には他にも見どころがあります。東塔の水煙が展示されていた西僧坊の隣には食堂があり、食堂には阿弥陀三尊浄土図と仏教伝来の道の展示がありました(写真撮影不可でした)。

回廊の外には鎌倉時代に造られた東院堂があります。

2015年の電車日本一周の時のもの

日本最古の禅を行うお堂です。薬師寺は南都六宗のお寺ですが、奈良時代の南都六宗は兼学が盛んで他の宗派の教えも積極的に学びました。境内に禅のお堂があるのも奈良仏教らしさを表しています。

金堂や東塔のある境内から一旦外に出て少し離れた境内には、玄奘三蔵院伽藍があります。三蔵法師のモデルであり法相宗の開祖とされる玄奘(げんじょう)三蔵の遺骨の一部を納めたお堂です。

そして南門の近くには休ヶ岡八幡宮(やすみがおかはちまんぐう)という神社があります。

薬師寺を守護する神社で、平安時代前期の寛平年間(889~898)に大分県宇佐八幡宮から現在の地に勧請された神社です。薬師寺を参拝する際は、まず休ヶ岡八幡宮から参拝することが習わしとされているのだそうです。

参拝の順序・所要時間

薬師寺はゆっくり参拝すると2時間半~3時間くらいかかるかと思います。

参拝ルートは、休ヶ岡八幡宮→中門→金堂→東塔→西塔→講堂→東院堂→西僧坊→食堂→休憩所→玄奘三蔵院伽藍、がおすすめかと思います。

西ノ京駅から近い入口は與樂門なので、南門から入る際は遠回りすることになります。

薬師寺の基本情報

拝観時間:午前8時30分~午後5時

拝観料
金堂・大講堂・東院堂:800円
※下の期間以外

金堂・大講堂・東院堂・玄奘三蔵院伽藍・西塔初層東面開扉:1,100円
※お正月(1/1~1/8)、春期(3/1~6/30)、GW(4/29~5/8)、お盆(8/13~8/15)、秋期(9/16~11/30)

金堂・大講堂・東院堂・玄奘三蔵院伽藍・西塔初層東面開扉・食堂・西僧坊の共通券:1,600円
※お正月(1/1~1/8)、春期(3/1~6/30)、GW(4/29~5/8)、お盆(8/13~8/15)、秋期(9/16~11/30)

詳細はホームページよりご覧ください:奈良薬師寺 公式サイト|Yakushiji Temple Official Web Site

最後に

薬師寺の見どころはいかがでしたでしょうか。

奈良に旅をする時は法隆寺や東大寺などの有名な場所に行くことが多いと思いますが、薬師寺にも見どころがたくさんあります。参拝する前にある程度予習していくと、充実した時間を過ごすことができるお寺なので、機会があれば是非ご参拝ください。

近くには鑑真が開いた唐招提寺があり、その先には平城宮跡歴史公園もあるので、足を延ばして薬師寺に参拝するのもおすすめです。

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