【名所解説】世界遺産法隆寺の見どころを紹介

散策の手引き

日本人であれば誰もが知っている法隆寺。

世界遺産に登録されている日本を代表する観光名所です。

修学旅行で行ったことのある人も、大人になってから是非とも一度は行ってもらいたい、素晴らしいお寺ですが、拝観料は1,500円とそれなりの金額がかかります。

ですので、参拝する前にある程度見どころを知っておき、できる限り滞在時間を長くするのがお勧めです。そうでないと、何が凄いのかよく分からず損した気分になるお寺でもあります。

今回は法隆寺の見どころを分かりやすく解説します。参拝の際の参考にしていただければと思います。参拝しない人も、これを知っておくと人におすすめできる内容になっています。ボリュームがあるので、目次から興味のある所だけ見てもらってもいいのかと思います。

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法隆寺のすごさ

世界最古の木造建築

法隆寺の何が凄いのかといえば、1300年以上も創建当初の姿を残していることです。五重塔・金堂・中門・回廊の四つが現存する世界最古の木造建築物です。

法隆寺の創建は推古15年(607)頃と伝えられていますが、670年に火災で一屋余すことなく焼失してしまいました。しかし、7世紀後半に再建されてから地震・雷・台風・火事から焼失を免れ、現在まで残っています。

日本に現存する古くからある古寺は、多くの人の多大なる努力により守られてきましたが、地震などの天災には抗えないものです。しかし法隆寺は、後述するように幾度の危機がありながらも、倒壊・焼失することなく、現在までその姿をとどめています。これはもの凄いことで、これだけで法隆寺を参拝する価値があると言えます。

豊富な宝物類

もう一つの法隆寺の魅力は、多くの宝物が残されていることです。190以上もの国宝・重要文化財があり、指定文化財以外を含むとその数は3,000点に及びます。それほどの国宝や重要文化財が残っており、金堂や宝物殿で飛鳥時代を代表する仏像をはじめとした有名な国宝を観ることができます。

大宝蔵院のところで説明しますが、有名な歴史のある宝物は一見の価値があります。

ついでですが、法隆寺で保管されていた宝物類は、現在一部が東京の国立博物館に保管されています。明治時代の廃仏毀釈の際に、皇室に献納された仏像などを国立博物館の法隆寺宝物館で観ることができます。

法隆寺の見どころ

法隆寺の見どころを、それぞれの建物から見ていきましょう。

南大門の鯛石

南大門をくぐる前に、鯛石という石があります。法隆寺を水害から守る石と云われ、大雨が降り近くを流れる大和川が氾濫しても、この石より上に水が来ることがなかったと言われています。

後ろを振り返ると、南大門から先の境内が周りよりも高くなっているのが分かります。

昔の寺社は災害に強いいい土地に造られた(もしくはそのように土地をよくした)ことも、分かります。

南大門

南大門は室町時代に造られた門になりますが、これより先にある古い建物は、全て室町時代よりも前の時代に造られたものになります。南大門自体は特別な門ではありませんが、現在と過去とを隔てる場所と思うと、特別な門に思えます。

中門

中門(南大門を真っすぐに進むとあります)の特徴は、門は出入り口が二つあるところです。普通、寺院の門の出入口は一つか三つなのですが、こちらは二つと珍しい数です。なぜ門の真ん中に柱が立っているのかは謎で、不思議な造りになっています。

中門の左右に立つ巨大な金剛力士像は奈良時代に造られたもので、日本最古の仁王像といわれています。右の阿像は、粘土を自然乾燥させて造った塑像で、左の吽像は木像です。

向かって右に位置するのが阿像。
向かって左に位置するのが吽像。阿吽の呼吸で門を護っている。

7年前に来た時は顔の一部が塑像で、他の部分と色が違いました。元々塑像だったのを修理の際に木をはめていましたが、その技術の高さに感嘆してしまう出来でした。現在は、その後の改修により木像となっています。

改修の前の吽像(2015年7月撮影)。顔の左側が塑像(粘土)、右側が木像だった。

2015年7月以前に参拝した方の中で、中門の写真がある人は見返してみてくだい。吽像の顔が左右で違う色になっているはずです。

五重塔

法隆寺のシンボルである五重塔は、個人的には一番見どころがあると思います。五重塔は日本最古の塔で、高さは約32.5mあり、地・水・火・風・空の五大をかたどっているといわれています。

この塔の凄いところは、1300年以上も地震や台風に耐え倒壊せず、また雷で消失しなかったところです。耐震技術が高く、土台がしっかりしており、使っている木材が良く、そして多くの人々の手で守られてきたから現存している文化遺産です。

五重塔の凄さその1 高度な耐震技術

五重塔ができてから、記録に残るだけでも畿内には大地震が40回以上あったといいますが、倒壊せずに1300年以上も立ち続けているのは、凄いとしか言いようがありません。なぜ倒れなかったというと、耐震技術が優れているからです。

五重塔の耐震技術が東京スカイツリーに使われていることはよく知られていますが、塔の中心に「心柱(しんばしら)」と呼ばれる一本の柱が通っていて、それが振子となることで倒壊を防いでいるといわれています。

また、建物全体が揺れの際に塔を支えるように造られているため、地震に強いといわれています。

柱をぎちぎちに組まず、地震で揺れたら建物が揺れ、揺れている間に複雑な組物で揺れを吸収する「柔構造」の造りになっています。壁の役割も大きく、仕切りとしての機能ではなく、地震や風から塔を守り、塔に架かる負荷を和らげているようです。

そして地震や大風だけでなく、雷からも被害を免れてきたのは、まさに奇跡としか思えません。五重塔に避雷針が付けられたのは大正になってからのことで、明治時代までは五重塔には避雷針がありませんでした。

相輪は金属なので、かなりの確率で雷が落ちます。現に鎌倉時代に雷が落ちて二重目から火が噴き出し、大工の懸命な消火により鎮火されています。   

その後、雷除けとして五重塔の法輪に4本の鎌が付けられ、その2本が現在も残っていますが、相輪は雷が落ちるリスクが高くてもなくてはならない重要なものです。重さが3トンもあるそうですが、塔の上部の屋根は上からの負荷がないと風で弱く飛ばされてしまうので、重い相輪を立てています。

相輪を立てないと風で塔が崩れ、立てれば雷にやられと、そんな状態でしたが、人々の手により長い間倒壊を免れてきました。

五重塔の凄さその2 頑丈な土台

五重塔の二つ目の凄さは、土台がしっかり造られているところです。法隆寺の金堂もそうですか、建物を支える基壇が二重基壇となっています。

この基壇が頑丈なのですが、地盤のしっかりした所まで土を掘り、そこに良質の粘土を一寸(約3センチ)ぐらいつき固め、その上に砂を置き、それを繰り返して頑丈な土台を造っています。『木に学べ』という本では約3センチと書かれていましたが、後述する法隆寺iセンターの展示では、粘土を10センチずつ固めたと書かれています。どちらにしても何層にも土を突き固め、重い建物を支えられるようになっています。この丈夫な土台があるから、地震や大風で建物が揺れても崩れることがなかったのです。

写真は南大門の礎石

ついでに、五重塔や金堂の柱を支える石を礎石と言います。これは自然石ですが、柱を石の表面に合わせて削ることで、石と柱がぴたっと重なり、地震がきてもびくともしないようになっています。こうしたところにも当時の建築技術の高さがうかがえます。

五重塔の凄さ3 樹齢千年の檜

そして五重塔のもう一つの凄いところは、樹齢1000年の檜を使っているところです。

金堂や五重塔に使われている檜は樹齢千年といわれています。千年もの間生存競争に勝ち抜いてきた檜は頑丈で、建築材として千年持つといわれています。法隆寺が地震や台風で倒壊せずに現存しているのは、建築技術だけでなく、樹齢千年の檜という素晴らしい素材を使っているからです。

金堂

五重塔の隣には、聖徳太子のために造られた釈迦三尊像が安置されている金堂があります。金堂も樹齢1000年の檜を使っています。

五重塔と重なりますが、金堂の見どころは軒が深く出ているところです。

寺院建築は中国大陸から伝えられましたが、大陸にはこのような深い軒はありません。他のお寺の金堂や講堂・五重塔もそうですが、軒が深いのは、雨が多く湿気の多い日本の風土に合わせて、日本人が独自に工夫したものです。

柵の部分の卍くずしと呼ばれる高欄(勾欄・欄干とも)と、雲の形をした雲斗(くもと)や雲肘木(くもひじき)も建築上の特徴です(五重塔もそうです)。

金堂の柵の高欄(勾欄・欄干とも)は飛鳥建築の特徴である卍くずしと呼ばれるもので、その下の人の字をした柱の支えも法隆寺の特徴です。

2階の軒下の柱には龍が巻き付いていますが、これは創建当初のものではなく、江戸時代の修復の際に取り付けられたものです。異質なので取り除こうと試みたものの、今となっては屋根を支えるには太い木が必要で、柱を削れないのだそうです。

法隆寺の五重塔や金堂は、建物の柱が礎石という自然石の上に乗っています。柱の底を石の表面に合わせて削ることで、柱と石がピタッと重なり、一度建てたらびくともせず、重い瓦を支え、地震がきても倒壊しないようになっています。こうした工夫があるのも、寺院建築の特徴です。

ついでに、寺院建築に関して本場中国大陸と日本との違いは、組物にもあります。日本の家には組物がありませんが、朝鮮や中国大陸、台湾では組物が軒を支えるために、家の建築に積極的に用いられました。日本では寺院が権力の象徴だったため、朝鮮半島からもたらされた組物を使う仏教建築を、従来の日本の住居建築とはっきり区別し、住居に使うのを禁止したからとされています。

その他の建築上の見どころは、回廊の屋根や柱を支える梁を曲げているところや、柱の上部が細くなっているエンタシス(上の写真の左の部分)、格子の窓です。

大宝蔵院

法隆寺の宝物殿の展示は圧巻です。高校日本史の資料集で一度は見たことのある、有名な国宝を間近で観ることができ、数々の名宝の前に立つと時間を忘れて見とれてしまいます。

館内は写真が撮れないのが残念ですが、解説が分かりやすく、仏像であれば木像・銅像・塑像・乾漆像・石造と全ての種類が揃っていて、飛鳥時代から近代にいたるまで様々な時代の仏像を観ることができます。白檀造りの九面観音像や百万塔も印象的でした。

夢違観音(ゆめちがいかんのん)像

白鳳時代のもので、この像に祈ると悪夢が吉夢に変わるとの伝説から、夢違観音と呼ばれ親しまれてきました。

百済観音像

飛鳥彫刻を代表する像で像高が209.4㎝と高く、像の前に立つとその存在感に圧倒されます。すらりと伸びた体躯に、優しく微笑みかける柔和な尊顔が特徴です。

玉虫厨子(たまむしのずし)

飛鳥時代のもので、側面に描かれた釈迦の前世説話「捨身飼虎図」「施身聞偈」が有名ですが、その上の錣葺(しころぶき)の屋根と精緻に造られた組み物の仏殿も注目ポイントです。金堂より古い建築様式で奈良時代よりも古い建築様式を知ることができます。

東大門

この門は珍しい三棟造りという奈良時代を代表する建物の一つです。

築地塀

東大門の土壁は築地塀といい、室町時代から江戸時代に造られたものです(法隆寺のHPより)。粘土を棒で一層ずつ何層にも突き固める「版築」と呼ばれる工法で作られており、各層が少しずつ風雨に侵され縞模様となっているのが、見どころです。

他の場所の築地塀はいつの時代のものか分かりませんが、塀が剥げたり曲がったり、瓦を支えている姿が時間の経過を表し、風情があります。

西院伽藍のその他の建物

知識不足ですが、西院伽藍にはまだまだ見どころのある建物があるようです。五重塔のある回廊の東には聖霊院という鎌倉時代に造られた建物があります。

その向かいには、東室(ひがしむろ)と妻室(つまむろ)という法隆寺に住んでいた僧が住んでいた建物があります。飛鳥時代に造られた古い建物です。

その東には綱封蔵(こうふうぞう)という、平安時代に造られたお寺の宝物を保管している蔵があります。修理の跡でしょうか、それとも他の木が差し込まれていたのでしょうか。いずれにしても、柱も礎石も立派です。

その近くには馬屋があります。

聖徳太子は厩戸皇子(うまやどのおうじ)が本来の名前で、それは母親が馬官の厩戸の前で聖徳太子を産んだからとされていますが、これはキリストが馬小屋で生まれたという話と似ています。唐の時代にキリスト教の一派である景教(ネストリウス教)が流行していたことと関係あるのではないかと、いわれています。

夢殿

夢殿は聖徳太子の徳を偲んで造られたと伝わる建物です。実際この地に聖徳太子が住んでおり、天平時代(平安時代)に夢殿が造られました。鎌倉時代に大修理をしたため、建築様式は鎌倉時代のものになるようです。

見どころの一つは、八角形の形ですが、八角形というのは屋根を抑えるのに難しい構造なのだそうです。一般的な四角形の屋根なら四隅を抑えればいいのですが、これが八つとなるとバランスが非常に難しくなり、高度な建築技術が必要になります。

てっぺんに重みのある宝珠を乗せて屋根を抑えていますが、蓮の蕾(つぼみ)をデザインしたもので当時の極楽思想を知ることができます。

八角形をしているのは、お釈迦様が一生のうちに経過した八種の相、降兜率(ごうとそつ)・入胎(にったい)・出胎・出家・降魔(または住胎)・成道・転法輪・入滅
を表しているといわれているそうです。

※降兜率(ごうとそつ)は兜率天から下ったこと、降魔(ごうま)は悪魔の誘惑に打ち勝つこと、成道は悟りを開いて仏になること、転法輪は説法・教化したこと

基壇が高いのも特徴です。

参拝の順序・所要時間

法隆寺を参拝する順序は、西院伽藍→大宝蔵院→夢殿か、西院伽藍→夢殿→大宝蔵院がおすすめです。時間があれば法隆寺を囲む土壁を外から見るのもおすすめです。

拝観時間はのんびり歩くと五重塔や金堂を30分、他の西院伽藍の建物を10分、夢殿を20分(夢殿まで歩いて戻る時間も含めて)、大宝蔵院が60分で、2時間くらいでしょうか。じっくり観るなら3~4時間はかけたいものです。

実際は1時間くらいしか予定に入れないと思いますが、1時間で3カ所観るとなると急ぎ足で参拝することになります。

後述する法隆寺iセンターという観光案内所にも立ち寄るのがおすすめです。

法隆寺の基本情報

拝観時間:午前8時~午後5時 2/22~11/3
     午前8時~午後4時半 11/4~2/21

拝観料金:一般1,500円 / 小学生750円(個人料金)
     西院伽藍内、大宝蔵院、東院伽藍内共通

アクセス:JR法隆寺駅より、徒歩約20分、バス「法隆寺参道」行き 法隆寺参道下車
JR王寺駅(北口)より、バス「国道横田・シャープ前・法隆寺前」行き 法隆寺前下車
近鉄筒井駅より、バス「JR王寺駅」行き 法隆寺前下車

周辺の観光名所

法隆寺iセンター

法隆寺の南大門のある参道にある観光案内所です。無料の施設で、飛鳥時代に法隆寺をどのように造ったのか知ることができます。

1階は法隆寺の簡単な見どころを紹介し、

2階で法隆寺の建築に関する展示と、法隆寺の改修の際に使った道具があります。

レンタサイクルのサービスがあり、建物のすぐ近くには柿の葉寿司の平宗があります。

開館時間:8:30~18:00
入館料:無料
休館日:年中無休

法起寺

平成5年に法隆寺とともに世界文化遺産に登録された古寺で、日本最古で最大の三重塔(国宝)が有名

現存最古の三重塔で、創建は慶雲3年(706)です。

近くにはコスモスの栽培地があり、10月中旬が見頃

拝観時間:2月22日~11月3日:午前8時30分~午後5時
     11月4日~2月21日:午前8時30分~午後4時30分
拝観料金:一般300円 / 小学生200円(個人料金)
アクセス:法隆寺から徒歩約17分(1.4km)、法隆寺駅から徒歩約34分(2.6km)

さいごに

いかがでしたでしょうか。現時点で僕自身が魅力を感じる法隆寺の見どころを紹介しましたが、法隆寺の見どころはこれからもまだまだ増えていくと思います。歴史や宗教、寺院建築を知れば知るほど、法隆寺の魅力は増えていくものと思います。

法隆寺iセンターの展示をしっかり観て、近くの法起寺や法輪寺に参拝するとなれば、朝早くから参拝しても1日では時間が足りないように思えます。

奈良に来たからには時間をかけて法隆寺を参拝してもらいたいところですが、奈良に来たからこそ他の有名な所にも行きたい、という人の方が多いでしょう。法隆寺だけゆっくり観ることはできないと思うので、あらかじめ見どころを押さえておいて、自分の観たい所を決めておくのが、旅を楽しむためにもおすすめです。

僕自身、7年前に電車日本一周をした時に、世界遺産だからということで法隆寺に行ったものの、正直その良さを感じられませんでした。それほどアクセスがよくなく、拝観料は1,500円と高く、時間もお金も勿体ない名ばかりの観光地だと不満でした。

ですが法隆寺について調べてみて、多くの見どころを知ってから2022年に再訪してみると、驚くほど素晴らしい場所でした。

せっかく時間もお金もかけて参拝するのですから、法隆寺の魅力をできる限り楽しんでもらいたいものです。

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本館の法隆寺を簡単に紹介した記事↓

【日本一周補完の旅】3日目①世界遺産法隆寺を歩く | 綴る旅 (tsuzuritabi.com)

別館の法隆寺の見どころを詳しく解説した記事。勉強になった参考文献も紹介しています↓

【散策記】電車日本一周補完の旅3日目①世界遺産法隆寺 | 見知らぬ暮らしの一齣を (tabitsuzuri.com)

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